2025年9月18日木曜日

愛のかたち40周年:18日目

愛のかたち40周年タイムカプセル – 18日目

愛のかたちの40周年を記念するために、9月は毎日1つずつタイムカプセルを作ります。この偉大な作品に関連した人、出来事、モノを、1985年から現在までいろいろ集めます。

She thinks that I was with my friends yesterday, but she won't mind me lying...

愛のかたち –今日の人

ペーター・ライヒ(2024年の姿と、父ヴィルヘルム・ライヒと写る少年時代)
ペーター・ライヒ(2024年の姿と、父ヴィルヘルム・ライヒと写る少年時代)

ペーター・ライヒがいなければクラウドバスティングは存在しなかったでしょう。ケイトが愛のかたちのアルバムで歌った歌は、子供の頃の彼の視点から、オーストリアの精神分析家である彼の父ヴィルヘルム・ライヒについて語ったものです。父は1957年に米国で収監中に亡くなり、ぺーターはグルノーブルでフランス語を勉強するためにアメリカを離れ、その後メイン州ルイストンのベイツ大学とボストン大学公衆衛生大学院に戻って学位を取得しました。彼はオレゴン州でVISTAのボランティアをしており、ボストンで薬物中毒者に関する仕事をし、ニューヨークではジャーナリストとして働き、過去30年間はボストン大学医学部で働いています。マサチューセッツ州在住です。1985年に、ケイトは彼の幼少期の回想録「ブック・オブ・ドリームズ」自身の歌にどのように影響を与えたかをインタビューで語っています。

ドナルド・サザーランドのポケットから「ブック・オブ・ドリームズ」を発見するケイト
ドナルド・サザーランドのポケットから「ブック・オブ・ドリームズ」を発見するケイト

ケイト・ブッシュ・クラブのニュースレターに、ケイトは次のように書いています。「(クラウドバスティングは)私が9年ほど前に棚で見つけた本にインスパイアを受けたものです。棚から呼びかけれたような気がして、読んでみるとその魔法のような内容に感動しました。幼い息子と父親の特別な関係を描いています。そして、その本は子供の視点から書かれています。父は彼にとってすべてであり、人生の魔法でした。息子にすべてを教え、オープンマインドであり、障壁を築かないようにと教えます。父は雨を降らせることができる機械「クラウドバスター」を作り、息子と父は一緒にクラウドバスティングに出かけます。

大きなパイプを空に向けて雨を降らせるのです。この曲の中では、親友から男の子に贈られた暗闇で光るヨーヨーと印象的に対比されています。それは彼にとって特別なもので、大事にしていました。しかし、父は物事にポジティブとネガティブのエネルギーがあると信じていたのです。蛍光塗料は当時は暗闇で光るおもちゃを作るために使用されていた材料ですが、父は非常にネガティブなエネルギーであると信じていました。それを手放す必要があると息子に伝えます。

復刻版の表紙に使われているケイトのクラウドバスティングの画像
復刻版の表紙に使われているケイトのクラウドバスティングの画像

少年はそれを捨てるのではなく、庭に埋めて父親を安心させたうえで、ときどき掘り起こして遊んでいました。彼がどれだけそのヨーヨーを愛していたか、どれだけ特別なものだったか、そしてどれだけ危険だと考えられていたかが、いくつかの点で対比されます。少年は父(一部の人々には危険だと思われていた)を愛し、またヨーヨーを埋めて遊びたいときにいつでも取り戻すことができるのを好んでいました。しかし、父親が連れ去られることについては何もできず、彼は完全に無力です。それは息子が父親なしでいることの孤独と痛みにどのように対処し始めるかにもっと関係があります。それは子供の目を通してた関係の魔法の瞬間ですが、悲しみにくれる大人によって語られます

ヴィルヘルム・ライヒが死の直前に息子のペーターに宛てた最後の手紙
ヴィルヘルム・ライヒが死の直前に息子のペーターに宛てた最後の手紙

ケイトはぺーター・ライヒに連絡を取り、素敵な返事をもらいました。1990年に雑誌Qでケイトは次のように述べています。「完成したときに、ぺーター・ライヒさんに自分がしたことを書いた手紙を書きました。彼の本で本当に感動したので、その人に祝福されるという感覚が私にとって重要でした。彼はとても素敵な手紙を送ってくれました。彼からもらったものをお返しできた気がして、信じられないほどの気持ちでした

愛のかたち –今日のできごと

ケイトの2023年の短編映像作品でぺーター・ライヒを演じる俳優ガス・ターナー
ケイトの2023年の短編映像作品でぺーター・ライヒを演じる俳優ガス・ターナー

ケイトが最近監督した短編映像作品は、「ウォーチャイルド」のサポートのための美しいトガリネズミの子のアニメーションだけではありません。2023年11月にアルバム「愛のかたち」の新版を発表したとき、グラミー賞にノミネートされた「バスカビル版」(詳細は後述)に合わせて、クラウドバスティングをテーマにした美しい「開封」映像が制作されました。この動画には、俳優ガス・ターナーがレコードを受け取り、自分について話をする若いペーター・ライヒを演じています。40年経ってからぺーターの物語に戻ってくるのを見るのは非常に感動的です。

この若い俳優のことをテレビ番組「テッド・ラッソ」の出演者としてご存知かもしれません。ケイトがとても気に入っているとても素敵な新しいアナログ盤のパッケージを披露しているだけでなく、この作品には時間を超えた思いを呼ぶクオリティがある。ここでは、1950年代にぺーター・ライヒが父の書斎でイギリスから小包を受け取り、そこには2023年のチャールズ国王の切手が覆うように貼り付けれられています。「うわあ。思ったより早く着いた。ずいぶん長い旅をしてきたみたいだけど…」彼はレコードのパッケージを開けて、トラックリストにクラウドバスティングが入っているのを見つけて大喜びします。「It's You and Me, Daddy」と歌う部分はとても感動的です。ある時点では、カメラはレコードパッケージの点滅するライフジャケットライトの視点から見たようになっており、ナインス・ウェイブとクラウドバスティングの間を巧みに絡み合わせたイメージになっています。その後、少年はケイトがこの曲に着想を得たことについて語り、画面の外から呼びかけるヴィルヘルム・ライヒの声(声優は他ならぬサー・イアン・マッケラン)に呼び出されます。「おいで、ペーター。行こう

開封ビデオでナインス・ウェイブを見るペーター・ライヒ
開封ビデオでナインス・ウェイブを見るペーター・ライヒ

この短編作品のクレジットを見ると、このすばらしい作品を作るために惜しみなく費用がかけられていることが分かります。脚本・監督はケイトで、撮影監督はシーマス・マクガーヴィー(アトーンメントとアンナ・カレリーナで2回アカデミー賞にノミネート)、衣装はエミー賞受賞のオディール・ディックス・ミロー(チェルノブイリのミニシリーズ)。ケイトの息子アルバート・マッキントッシュが芸術監督助手としてクレジットされています。

愛のかたち –今日の作品

katebushcollectables.comのご協力でお届けします)

バスカビル版のLEDライト付き見開きジャケット内側
バスカビル版のLEDライト付き見開きジャケット内側

2023年発売の12インチアナログ盤の「愛のかたち」バスカビル盤には、表がティモラス・ビースティーズによる新しいイラスト(ハート型の形に2匹の猟犬、KTシンボルは分かりますか?)、見開きの内側(海の生き物が絡まって浮かぶケイトの姿で、ライフジャケットには太陽電池駆動の赤いLEDライトが点滅)、裏ジャケット(日光の下でライトのバッテリーを充電するためのソーラーパネル付き)という構成です。ジャケットの中袋はクラウドバスティングのシルエットになっています。「愛のかたち」のバスカビル版はケイトのイラスト入りアルバムのシリーズの最初の作品、この後に「ドリーミング」と「雪のための50の言葉」(同じくティモラス・ビースティーズのイラスト付き)が続いています。ファンにはまたお金を使ってしまうことになりますが、ユニークなアイテムです。

タイトル帯がついたバスカビル版
タイトル帯がついたバスカビル版
タイトル帯を外したアルバムジャケット
タイトル帯を外したアルバムジャケット
バスカビル版の見開き内側
バスカビル版の見開き内側
ナインス・ウェイブのためのティモラス・ビースティーズのイラストの完全版
ナインス・ウェイブのためのティモラス・ビースティーズのイラストの完全版

サイトには、こう書かれています。「このソーラーパネルで充電するのに一番いい方法は、明るい日光の下で充電することです(でも、反るかもしれないのでレコードは出してください)。その場合、10分以内で非常に高速に充電できます。曇りガラスがあったり、雲が多い日もあまり良くありません。室内のLED照明では充電できませんが、ハロゲンライトならできるはずです。ソーラーパネルを人工の光源の10 cm以内の距離に近づけないでください。ソーラーパネルに熱で損傷を与えるおそれがあります。いろいろやってみて、ふるまいが少し分かりにくくても辛抱強くしていただければと思います。これは環境に優しくするための新しいアイデアですので。」

バスカビル版 – 太陽光発電パネル付きの裏ジャケット
バスカビル版 – 太陽光発電パネル付きの裏ジャケット

この作品には、クリエイティブ上、構造上、技術的な課題がありました。技術的には、基本的には標準的な見開きジャケットに組み込めるほど十分に小さいLEDとソーラーパネルを調達する必要があります。構造的には、回路と太陽電池パネルを支持し保護しながら、全体的なデザインにシームレスに組み入れるようなジャケットのデザインを作る必要があります。デザインの細部へのこだわりで、スリーブの端にイラストが回り込むようになっていて、強い効果になっています。最終的にポッツォーリはパートナーと協力してLEDのためのオーダーメイドのソリューションを開発しました。

バスカビル版のソーラーパネル
バスカビル版のソーラーパネル

回路基板は、このバスカビル版専用に設計されたもので、標準的な見開きジャケットの厚さに収まるようになっています。この工夫により、バスカビル版は2025年にグラミー賞のベスト・レコーディング・パッケージにノミネートされ、ケイトと息子のアルバート・マッキントッシュがアート・ディレクターとしてノミネートされました。ケイトは40年経っても「愛のかたち」で賞にノミネートされていることになります。下の回路基板をよく見ると、「Fish People」という名前が刻印されているが、これを見るためだけにパッケージを引き裂くのはやめてくださいね。

バスカビル版の回路基板

新版について、ケイトは次のように書いています。「この新盤の制作は楽しい作業でした。アナログ盤でリリースされたアルバムの物理的な存在感を皆さんが喜んでくれているのを見るのはとても嬉しいことです。私にとっても、特にティーンエイジャーのころはいつも楽しみでした。レコード店内のやかましいのも、その体験の一部でした。アルバムを買うのは一大イベントだったのです。音楽とデザインを含み、アルバムとその所有者の間には、現実世界に存在する場合には特別な感情的つながりが発生します。私たちそれぞれが、自分だけの方法で大事にしているものです

愛のかたち –今日のトリビア

世界的に有名な帽子デザイナーがケイトのために特別な帽子を作ったのかもしれません。「愛のかたち」のバスカビル版の開封動画には、フィリップ・トリーシーがクレジットされています。フィリップ・トリーシーOBEはアイルランドのオートクチュールの帽子デザイナーで、最近ラジオ番組のデザートアイランド・ディスクスで、何年か前にコーヒーショップで列に並んでいたケイトに偶然出会ったと語っていました。フィリップはケイトの音楽の大ファンです。動画の中でペーター・ライヒは(オリジナルのクラウドバスティングビデオで)「ケイトはステットソン帽をかぶるべきだったね」と言いますが、その前に見える写真で若いピーターがそのタイプの帽子をかぶっているのが分かります。それでケイトはそこを正したのでしょう。

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