
愛のかたちの40周年を記念するために、9月は毎日1つずつタイムカプセルを作ります。この偉大な作品に関連した人、出来事、モノを、1985年から現在までいろいろ集めます。

愛のかたち ― 今日の人

昨年の6月、カナダの偉大な俳優、ドナルド・サザーランドが長い闘病の末、88歳で亡くなったという残念なニュースが入ってきました。「赤い影」、「戦略大作戦」、「M★A★S★H マッシュ」、「ハンガー・ゲーム」など100を超える映画に出演していますが、ケイト・ブッシュのファンが覚えているのはもちろん、ヴィルヘルム・ライヒ役で登場した1985年のクラウドバストイングのビデオでしょう。

ドナルドさんは、2015年にデイズドでこのビデオの制作について語っています。「ニック・ローグの『赤い影』のヘアメイクだったバリー・リチャードソンが、ケイト・ブッシュのミュージックビデオをやらないかと尋ねてきました。私はノーと返して、そのまま別の会話に移りました。数日後、ドアにノックがありました私はサヴォイ・ホテル(ロンドン)に滞在していました。川に向いた312号スイートです。いい部屋でした。とても居心地が良くて、人目もありません。ドアを叩くとすれば、フロア付きの執事だけです。ドアを開けると、そこには誰もいませんでした。挨拶の声を聞いて、下を見下ろすと、そこに立っていたのはとても小柄なケイト・ブッシュでした。バリーが私が滞在している場所を彼女に話していたのです。どういうつもりでしょう?ケイトは、自分のビデオについて説明したいと言いました。部屋に招き入れると、座って何か話をしました。

聴こえたのは「ヴィルヘルム・ライヒ」だけです。(ベルナルド)ベルトルッチ監督の『1900年』をパルマで撮影したときに、彼の『ファシズムの大衆心理』の私家版の本を持って行っていました。ライヒの作品から、ベルナルドが私に演じさせたアッティラ・メランチーニの心理的基礎を学びました。ライヒに関することは、どれも私の心に響きました。その場所にライヒがいるかのような気がしました。よく喋るケイト・ブッシュの姿を借りて、私と向き合って座っているような気がしました。完璧なシンクロニシティーです。完璧でした。もう少し話があった後、私はOKして、「クラウドバスティング」を制作しました。ケイト・ブッシュさんは素晴らしい人です。本当に素晴らしい。あの作品に参加して良かったと思います。撮影について(覚えていることは)?車の中にいて、丘があって、私が、というかライヒが連れて行かれ、車のリアウインドウから振り返って、ライヒの息子のピーターが立っているのを見たのを覚えています。


1985年のインタビューで(それ以降も)、ケイトは自分のビデオでこの役を演じるのにドナルド・サザーランドを確保できたことが、とても嬉しく幸運だったと語っています。「父親の役にだれがいいかという話をしていたとき、すぐにドナルド・サザーランドのことを思いついたのですが、みんな笑っていました。世界有数の俳優ですからね。そして、冗談で、それはいいよねなどと話していました」。私たちは実際にエージェントにアプローチしましたが、即答でノーという返事でした。ただ忙しすぎて無理だということでした。でも、知り合いが御本人の友達を知っていて、その人に聞いてもらうと、2本の映画を撮影する間の3日間なら時間をくれると言ってもらえました。いまだにそう判断してもらえたことが信じられません。

時間をいただけたことは、本当にありがたいことです。本当に私にとって特別な体験になりました。いまだに飲み込めないような気分です。とにかく最高でした。明らかにとても有名で手の届かないような人が、あんな小さなプロジェクトのために無理して時間を空けてくれたということには、大きな意味があります。彼の判断にとても感動しましたし、私にとってとても大きな意味がありました。一緒に仕事ができるなんて、こんな幸運はもう二度とないだろうと思いました。私はドナルド・サザーランドと共演したのですから。とんでもないことです。感受性にあふれたエネルギーを撮影に注いでくれて、私の方もそれに応えました。彼は、私にとっては確かに、撮影している間はずっと、間違いなく私のお父さんでした。本当に素晴らしい人でした」
愛のかたち ― 今日のできごと

ケイトの曲クラウドバスティングのユニークな楽しいパフォーマンスが、イタリアのテレビチャンネルRAIのファンタスティコ番組で1985年12月に発表されました。同じ放送で神秘の丘も演奏しています。ビフォー・ザ・ドーンまで、クラウドバスティングをケイトが番組等で演奏したのは数回だけでした。今はYouTubeでそれを見られるようにしてくれているのはありがたいことです。これは、ロンドンで録音されて、番組ののためにテープで送られたようです。この曲の喜びと活気を強調していて、ケイトは終始微笑んでいて、2014年でステージ上でこの歌を歌ったときの前兆のように思えます。
ステージ上にはまずパディ・ブッシュ、次にデル・パーマーが登場し、ケイトのすぐそばに立って、全員傘を広げてケイトに合わせて歌います。。また、これは、1979年のコンサート以来初めて、ケイトが他の女性と共演したパフォーマンスでした。そして、時間が許せばケイトは例の雨を降らせる機械も登場させたことでしょう。すてきなパフォーマンスです。

愛のかたち –今日の作品
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さて、上記のパフォーマンスをご紹介した後ですので、今日の作品はこのクラウドバスティングの傘にしておきましょう。これまでフィーチャーしてきた多くのアイテムとは異なり、ケイトの公式サイトで販売されているので、簡単に入手できます。この傘については、愛のかたちのサイトのページで「クラウドバスティングな日のための品」と説明しています。


渦巻き状のデザインで、曲から次の歌詞をあしらっています。「Every time it rains, you’re here in my head, like the sun coming out, I just know that something good is gonna happen, I don’t know when, but just saying it could even make it happen」。このアイテムは2023年11月に最初に発売されたときはすぐに売り切れました。ケイトのチームは需要を過小評価していたようです。その後、何度か再入荷されています。
愛のかたち ― 今日のトリビア
2014年、ビフォー・ザ・ドーンのスクリーンに映し出されたライフジャケットの見事なシーンのために、巨大な水槽での数日間の撮影のために、パインウッド・スタジオの映画専門家とダイバーの大規模なチームが呼び集められました(ケイトも軽度の低体温症にかかりました)。しかし1985年には、もっと身内のセッティングで撮影されました。写真を撮影したのはケイトの兄のジョン・カーダー・ブッシュです。彼の2015年に出版された写真集「ケイト:インサイド・ザ・レインボウ」でジョンは撮影のためのセットを次のように説明しています:「私はオーストラリア製のガーデンプール、そのビニールのプールを固定するためのクリップ付きの円形の金属の波板を送りました。花と草を並べると、キャシーのラファエル前期の世界に戻りました。私はプールの上に吊るされた足場の上にいたが、これも正解でした。キッチンの蛇口から流れ込む温水は黒くて怖い感じでした」

ジョンは1985年にケイト・ブッシュ・クラブのニュースレターでもこの撮影について書いています。「これはいろいろな意味で準備がはるかに簡単でしたが、実際の撮影は厳しいものでした。ナインス・ウェイブと非常に密接に関連しているので、ケイトは水中にいる必要がありました。場面に適した衣装、この場合にはビクトリア朝のナイトガウンで快適に過ごせるためには、水は暖かくなければなりませんでした。夜、海、大型船の近くのような感覚を得るために、スタジオの照明が不可欠でした。映画業界で使われている大きなタンクを見つけましたが、視覚的にはあまりふさわしくない感じで、さらには数百ガロンの温水で満たして、その後排水しなければならないという問題がありました。
最終的には大きいけど浅いパドリングプールを見つけ、これを使って、ケイトの周りに深い海と寒い夜があると示唆するのに十分な量でありながら、対処すべき水の量を最小限に抑えるようにしました。照明には大量の電気が使われていたので、水漏れや大きな水しぶきは危険で、セッション中は常時誰かが電源のそばに立っていました。湯気が出るほど温かい水に池の雑草を放り込み、難破船の残骸のような花も足しました。撮影の準備やスタジオでのケイトの制作との兼ね合いで、リハーサルの時間はなかったので、ケイトがやってくるとすぐに、最初は梯子で、それから下に降りて、良いアングルを探しました。ポラロイドはこうした場面でとても有用でした。ポラロイドを取ってケイトに見せることができ、そうやって最高のアングルにするためには私も水に入らなければならないということになりました。

ベストショットを印刷している間に、写真を実際とは違う形で印刷して本当の地平線と変えてみると、見る人の情景についての認識が劇的に変わることに気がつきました。実際には、オリジナルのネガでは、ケイトは明らかに水の中で仰向けに横たわっているのですが、最終的なプリントでは、立っているか、浮いているか、走っているか、あるいは飛んでいるように見えます。また、この視点の変化によって「海」が超現実的な背景になったので、ケイトがその一部なのか、その中にいるのか、などと思うようになりました。
追加トリビア:オリジナルアルバムの裏ジャネット撮影とビフォー・ザ・ドーンの撮影以外にも、ケイトがライフジャケットを着て水槽の中でポーズをとった3回目の機会がありました。2014年3月のビフォー・ザ・ドーンの告知、ポスター、宣伝のためにトレバー・レイトンと実施した写真セッションです。


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