2025年9月10日水曜日

愛のかたち40周年:10日目

愛のかたち40周年タイムカプセル – 10日目

愛のかたちの40周年を記念するために、9月は毎日1つずつタイムカプセルを作ります。この偉大な作品に関連した人、出来事、モノを、1985年から現在までいろいろ集めます。

“I am falling, like a stone, like a storm, being born again...into The sweet morning fog”

愛のかたち ― 今日の人

ジュリアン・ドイル

ジュリアン・ドイルが監督したケイトの「クラウドバスティング」のミュージックビデオは、この曲の驚くほど美しい歌詞を見事に視覚的に表現しています。このビデオは、オルゴンエネルギーの力を利用して天候を制御できると信じていた評価の分かれる精神分析家ヴィルヘルム・ライヒの実話を語っていまず。動画の印象的なイメージと魅力的なストーリーテリングによって、曲の感情的な深みが見事に補完され、本当に忘れられない視聴体験となっています。クラウドバスティングは、史上最も象徴的なミュージックビデオの1つとして広く認識されており、これはまさにジュリアン・ドイルの監督としての創造性と才能の証です。

ケイト・ブッシュ・クラブのニュースレターにケイトはこう書いています。「監督のジュリアン・ドイルさんと制作しました。テリー・ギリアムさんの勧めでした。テリーは私の好きな映画製作者の一人で、彼が関わってくれたことをとても光栄に思っています。制作には5~6週間詰めて作業しました。」ジュリアンは、ケイトの映像作品「ライン、クロス、カーブ」(1993年)でも技術アドバイザーを務めています。ジュリアンとモンティ・パイソンの世界から来たテリー・ギリアムのほか、モンティ・パイソンの衣装デザイナーであるヘイゼル・ペティグや、今はなきテリー・ジョーンズも、2011年のディレクターズ・カットのための精緻な映像の制作に参加しています。

クラウドバスティングのビデオのセットにいるケイト – ジョン・カーダー・ブッシュの「ケイト:インサイド・ザ・レインボー」より
クラウドバスティングのビデオのセットにいるケイト – ジョン・カーダー・ブッシュの「ケイト:インサイド・ザ・レインボー」より

ジュリアンは、「クラウドバスティング」のビデオ制作についてDazed誌にこう語っています。「ケイトは絵コンテを持って私のところにやってきました。昇る太陽に顔が書いてあったのを覚えています。笑顔を惜しみなく振りまいてくれる素敵な女性でした。私もヴィルヘルム・ライヒについて知っていたので、どういう影響を受けたか分かりませしたポップ・ビデオではなく、映画のように、本当のストーリーが見えるべきだと思いました。私は物語が本物であるというように示したかったので、ケイトに本を取り出してもらいました。時間も欲しかったので、曲の一部を2回繰り返してもらいました。

クラウドバスティングのビデオ撮影の最後のショット
クラウドバスティングのビデオ撮影の最後のショット

早起きして、丘から降りるケイトの後ろで太陽が昇る(シーンのショット)が撮れたのは嬉しかったですね。そして、(ドナルド・サザーランド)をクローズアップして、笑顔から心配な顔に変わり、そこから光のフレアにパンしたトラックも良かったです。(ドナルドが自分のシーンを撮影し終えたとき)彼に言いました。「あなたの分は完了です。ありがとうございました。でも、太陽の方に向かって丘を歩いて降りていってもらえませんか」。上着を脱いで素晴らしい姿でした。撮影の最後のショットはケイトが手を突き上げる最後のショットでした。カットするまで7フレームしかありませんでした

愛のかたち ― 今日のできごと

悪名高いナイトフライトのインタビュー(1985年)
悪名高いナイトフライトのインタビュー(1985年)

インタビューに応じて自分の作品を宣伝するのは、ケイトは特に好んでするわけではないのですが、長年の仕事のために一生懸命働いてきた後であればそうしなければいけないとは考えています。愛のかたちのインタビューでは、説明するには複雑なアルバムなので、ケイトは質問される曲ごとに慎重に説明を準備してして、インタビュアーが特に魅力的でない限り、準備した要点からあまり外れない傾向がありました。

ファンの間では、インタビューがうまくいかないことがあるという悪名高い例として、ケーブルテレビネットワークのUSAネットワークでのバラエティ番組ナイトフライトによるインタビューがあります。1985年、ケイトは愛のかたちを宣伝するために、珍しくアメリカを訪れました。

ロナルド・ヒルがファンとして、1991年にニュースグループrec.music.gaffaで次のように述べています。「...ケイト・ブッシュのビデオクリップの中で最も耐え難いものです。30分以上もの間、ケイトはまばたきもしない固定カメラの前にじっと座っていて、際立った忍耐とプロ意識をもって、途方もない無知で場違いな質問に答えています。いつものように、ケイトはこうした無礼にたいして完璧な優雅さで応えています。」37分にわたる未編集の生の映像を今見ることができるのは驚くべきことですが、気安く見られるものではありません。

インタビューでは、ケイトのいろいろな姿が見られます。インタビュアがアルバムを「ダンス音楽」というのを聞いて笑うところ(1:44)、何回もアシスタントが会話を中断してマイク、服、髪の毛を触り回すところ(4:16)、インタビュアが前作を誤って「Dreaming」と呼ぶところ(9:07)、どのような男性が「セックスシンボル」だと思うかと聞かれて呆れている場面(32:39)、愛のかたちの曲でインタビュアがコーラス担当を使ったと固執するので、何度もコーラス用の歌手は使っていないと説明しなければならない場面(18:50には“track”というところでフロイド的に“prat”と言い間違えています)、そして本当にびっくりするのは、最後に男性について「いちばん魅力的なこと」を言うクリップを撮りたいと頼まれるところです(36:49)。とうとう歯を食いしばりながら「穏やかに話すイギリス人」と言っています。ケイトはこんな試練を受けている間に透明人間になる方法の歌詞を書き始めたのでしょうか…。

番組「ナイトフライト」のインタビューを受けるケイト(1985)
笑顔で苦境をしのぐ「ナイトフライト」のケイト

愛のかたち –今日の作品

katebushcollectables.comのご協力でお届けします)

このとてもめずらしいアイテムの画像を共有してくれたペッカ・ヒルトゥネンに感謝します。1985年にHMVやイギリスのバージン・メガストアのようなショップを飾った神秘の丘のレコード店用ディスプレイスタンドで、イギリスでのチャート3位のポジションに向けて7インチ・アナログシングルをプロモーションしたものです。このような数十年前のレコードショップのディスプレイは、あまり良い状態では保存されていないことが多いですが、ごくまれに保存状態が良いケースでは、音楽業界におけるストリーミング以前、スポティファイ以前の時代を偲ぶ貴重なアイテムになります。

愛のかたち ― 今日のトリビア

ケイト(ロケットマンのビデオから)と宇宙飛行士のジョン・ヤングとロバート・クリッペン。
ケイト(ロケットマンのビデオから)と宇宙飛行士のジョン・ヤングとロバート・クリッペン。

ナインスウェーブの素晴らしいこんにちは地球の導入部の音声素材には、何か心に残るものがあります。ケイトが使った短い会話の断片は、NASAのスペースシャトル計画の最初の軌道飛行である、宇宙飛行士ジョン・ヤングとロバート・クリッペンが搭乗したコロンビア号のスペースシャトルが1981年4月14日に着陸した時のものです。会話で使われた部分は、こちらのYouTubeクリップで聞くことができます。タイミングは4:30「Columbia Now at Nine times the speed of sound」、5:10「Roger That, Dan, I’ve got a solid TACAN locked on, er, TACAN 2 and 3」。その他には次のようなものがあります。「The, uh, tracking data, map data and pre-planned trajectory are all one line on the block」と「Show your block decode」。TACANはTactical Air Navigation Systemの頭の文字を取ったものです。「ダン」とは、飛行士たちと管制室で通信していたダニエル・ブランデンシュタインのことです。

22年間の計画の中で、コロンビアはスペースシャトル計画で28回のミッションで飛行し、300日間以上を宇宙で過ごし、地球を4000周以上周回しました。コロンビア号は2003年2月1日、16日間の科学ミッションの後、大気圏再突入の際に破壊し、搭乗していた7人の乗組員全員が死亡しました。

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