
エアリアルのアルバム20周年を記念して、今週は11月7日(発売記念日)まで毎日1つずつタイムカプセルを作ります。これは、ケイトのすばらしい8枚目のスタジオアルバムに関連するイベント、人、物品などを、その日ごとに集めたものです。多くの人にとって、まだ「新しい」アルバムだと感じられるはずで、とても20年経ったとは思えませんが、このアルバムからはまだまだ美しい贈り物が現れて続けています…

エアリアル – 今日のできごと

キング・オブ・ザ・マウンテンでそそられた後にアルバムのリリースを待っていた頃、ケイトの友人であるリサ・ブラッドリーが運営していたケイト・ブッシュ・クラブが、新しい公式ウェブサイトに置き換わることが発表されました。将来、情報や発表が掲載されることになる場所です。悲しいことに、これは公式のファンクラブ誌のエアリアル号が発行されないということを意味していました。もう、ある種の伝説になったのかもしれません。ケイト自身が、新しいレコードの曲に取り入れたインスピレーションや仕事について書いたり説明していた場所です。
雰囲気、神秘性、情熱、複雑なサウンドのディテールに満ちた、ケイトらしい大胆さで長編の作品である2枚組の「エアリアル」は、すでにそれを聴いた人々すべてから傑作と公言されていましたが、ケイトからも聞きたかったものです。
そこで今日は、当時のプレスリリースから取って、ケイト自身が曲について何を言っていたかを振り返ってみましょう。公式プレスリリースでこう言っています。「皆さんから感じた期待感に心から感動しました。待ってもらっていたことを本当に光栄に思います」。さらに続けて、「2枚組のディスクにして良かったのは、自分が好きなセミ・クラシック・スタイル(空間的でアコースティックな音楽)から、ドラムが多いバンド・ベースの曲まで取り入れられることです」

ケイトは息子バーティを迎えたことや、育てるために必要だった時間について話しました。「本当に短い時間に詰めて仕事をしなければなりませんでしたが、それまではなかったことです。いつもスタジオで毎日14時間ずつ過ごすような仕事をしていました。それと同じように時間を使う余裕はありませんでした。ですから、あまり何も起こらない期間がたくさんありました。でも、そういう制約があったことは、私にとってはとても良かったと思います。制作対象から離れなければならない状況に絶えず追い込まれるからです」
ケイトは新旧の仲の良いミュージシャンとのレコーディングセッションについても語っています。「仕事しながら遊んでもいるという感覚がありました。アイデアを形にしようとするのは、時にとても難しく、もどかしいので、それはとても重要なことです。簡単なプロセスではありません。昔からの仲間と一緒に仕事をするのは、本当に楽しいことです。感動的なのは、「エアリアル」にケイトの「愛のかたち」以降の全アルバムでスコアを手掛けていたオーケストラ編曲家マイケル・ケイメンの最後の作品が含まれていることです。自分が貢献したアルバムがアビーロードスタジオで2003年10月に完成してからわずか数週間で亡くなりました。「マイケルの素晴らしかったのは、作品がとても視覚的なことで、とても素晴らしい仕事でした。もう彼がいないなんて信じられません」。

初めての2枚組アルバムをリリースすることについても話しています:「自分が買った好きなアーティストのダブルアルバムは本当に好きでしたが、それは品物にお金を使うこととは違う感覚でした。どちらかといえば、芸術的な声明のようです。これこそ『私の音楽』だと言ってるようです」
アルバムリリースの前週にBBCラジオ2で件・ブルースのインタビューを受けたときの、いくつかの曲についての話の引用の一部を以下に紹介します。
このアルバムがなぜ「エアリアル」と呼ばれているのかについて:「この言葉が良いと思ったのは、非常に多くのレベルを備えているからです。もともとは「空気の」を意味していて、高さを象徴する空中のイメージがかならずあるので、鳥をテーマにした2枚目のディスクにはとてもよく合っていると感じました。そして「エアリアル(アンテナ)」は音波を集めて発するものでもあり、テレビや携帯電話にはかならず接続されています。いろいろな意味がかかった面白い言葉だと思ったのです」
π~円周率の曲について:「言葉の歌詞ではなく、数字を歌うことに挑戦したのが良かったです。数字には普通の歌詞のように感情がなく、それを歌うのが本当に魅力的でした。たとえば、7について歌うことに感情的な要素を入れようとしてみたり、9についていろいろ考えてみたりして。数字には魅力があります。ほぼすべてのものが数字に分解できるという考えには、心を惹かれます。そして、20~30年前には思いもよらなかった形で、私達は皆完全に数字に囲まれて生活していて、携帯電話を持って数字を頭に描きながら歩き回っているようなもので、まるでコンピューターみたいなものです...

円周率を定式化することに人生を費やしている人々がいることは興味深いことです。この数のアイデアは、ある意味無限に続くかもしれないのに、人はそれをピンで留めて印をつけて自分のものにしようとするのです。数学と音楽の間には、パターンや形状という意味でたくさんのつながりがあると思います...」
バルトロッツィ夫人について:「どういうことでしょう?洗濯機のことでしょうか。これはバルトロッツィ夫人についての歌です。この歌の中でいっぱい洗濯をしている女性です(笑)。私のことではありませんが、洗濯に時間をかけることがなければ、この曲は書いていなかったと思います。それでも、作りごとの曲なのですが。子供ができたらすぐに洗濯ものが急に増えるものです。そして、これを面白いと感じている人が多いというのも、いいなと感じています。素晴らしいことだと思います。この曲は、私が今まで書いた中でも最も重い曲の1つだと思いますから。(笑)服というのは、興味深いものだと思いませんか。それを身に着けている人のことを饒舌に語るものです。服には、皮膚の細胞で身につける人が少しずつ乗り移っていて、着ている人がどういう人か、何を考えてるかについて多くを語るのです」

「そのため、服自体がとても興味深いものだと感じます。そして、この女性が思い浮かびました。座って洗濯機が回るのを見ていて、それが新しい洗濯機で、その水の中で服がぐるぐる回っていて、その水が海のように見えてきて、服、海、洗濯機、キッチンのイメージが広がるという、そんなアイデアで遊んでみるのが面白いんじゃないかと考えたのです。私が作ろうとしたのは、洗濯機の前に座って、まるで白昼夢をみるように、突然海の中に立っているような旅の感覚でした」
バーティについて:子供を持つことは、このレコードでのケイトの曲作りにどの程度影響を与えたでしょうか。「そこらじゅうにあります。私の人生において大きな部分を占めているので、バーティは私の仕事でもとても大きな部分を占めています。出来るだけ一緒に多くの時間を過ごすことができるのは、素晴らしいことです。お分かりでしょうけど、子供が小さい時期はそれほど長くないのです。彼はもう大人になりつつあって、私は機会を逃さないで、できるだけ長い時間を過ごしたかったのです。ですから、まずバーティの存在があって、その次にレコードがあるので、それが制作に長い時間がかかった理由の1つでもあります。(笑)私の場合はそうでなくても時間がかかるんですが、それを、バーティと過ごしたい時間の残りのぎりぎりの時間でやろうとしたのです」

「こんなに素敵な息子がいるのは素晴らしいこです。このような曲については、わたしに言わせれば特別になりすぎることは決してないでしょうし、あまり分かりやすすぎないアレンジをしてみたかったので、中世の音楽みたいにしようと思ったんです」
「スカイ・オブ・ハニー」について:「鳥のさえずりをベースにしていて、言葉を使うのとは違う言語を使うというアイデアが面白いと思いました。「π~円周率」もそういう感じです。言語なのですが、普通に話す言葉ではありません。鳥の鳴き声は本当に美しい音だと思います。面白いと感じたのは、一日の時間のそれぞれの鳴き声があることです。例えば夜明けの合唱は、光と強く結びついているようです。そうしたことから、鳥の歌と光や時間の流れを結びつけるような試みをしてみたいと考えたのです。(注:この引用はラジオでのマーク・ラドクリフとの会話から取ったものです。この続きはまた今週中にお届けします。)
2005年11月7日にアルバムが世界にリリースされようとしていた時の気持ちについて:「本当にリリースになることに、とてもワクワクしていました。制作に時間がかかったので、完成しないんじゃないかと思っていたからです。すべてまとめ上げて、うまく作用するようにしようという試行にながい時間がかかり、何度も繰り返したので、そうして試しながら完成させるにはエネルギーや強さが足りないんじゃないかと思っていました。すべてを完了させることができて、本当に安心しました。仕上がったとき、行儀のいい行動から解放されたと感じました。他のこともできるし、他の人からの反応もすごくポジティブだったので、とてもいい気分です。ギャップがとても長くなっていたことを心配していたのだと思います。ある意味で、ちょっと感傷的に聞こえてしまうかもしれませんが、皆さんが私のことを忘れてしまっているのではないかと心配していたんです」
エアリアル – 今日の人

ボスコ・デ・オリベイラは、有名なブラジル・パーカッショニスト、レコーディングアーティスト、バンドリーダー、教師の顔を持っています。ヨーロッパにおけるブラジル音楽シーンで影響力のある役割を果たしたことでよく知られており、1984年にロンドン・スクール・オブ・サンバを共同設立しました。広範なキャリアを通して、ケイト、シャーデー、テリー・キャリエ、マッドネス、デュラン・デュラン(ウェディング・アルバムに収録)、ミルトン・ナシメント、アイアート・モレイラなど、国際的な評価を受けるアーティストとツアーやレコーディングを行っています。
ボスコは、スカイ・オブ・ハニーのノクターンとエアリアルでパーカッションにクレジットされています。素晴らしいパフォーマンスです。演奏活動の傍ら、教師や講師としても一目置かれる存在で、ロンドン大学で音楽の修士号を所有しています。「サンバの掟」や「キューバの音楽」についての講演やデモも行っています。ボスコは30年近くイギリスに住んでいましたが、その後ブラジルに戻り、イギリスで時折演奏して地元の観客に喜ばれています。

エアリアル – 今日の作品
(katebushcollectables.comのご協力でお届けします)
2005年に立ち上がったケイトの公式サイトでは、3種類のエアリアルのリトグラフが販売されていて、それぞれ250部限定で番号付きでした。1つはアルバムのカバー、2つめは「キング・オブ・ザ・マウンテン」シングルのイラスト、3番目はトレバー・レイトンの撮影による白いベールから覗いているケイトのカラー写真でした。それぞれのサイズは約26インチ x 26インチです。現在は、それぞれ約200ポンドで取引されています。

エアリアルの限定版プリントとしては、その後2010年にケイトは、サウンドウェーブ・アート(ノードフ・ロビンズのチャリティ支援)と共同で、エアリアルの曲のサウンドウェーブに基づいたプリントを制作しました。ケイトのサインが入っていて、真ん中に手書きの言葉が書かれていました。1つには「What a lovely afternoon…」、もう1つには「And fold yourself up…」と入っています。イギリスのアーティストであるティム・ウェークフィールドが制作、署名、番号付けをした各プリントは、1枚あたりの販売価格が1,800でした。45インチ x 45インチです。それぞれ50部限定の製作でした。

エアリアル – 今日のトリビア
「エアリアル」のアルバムのアートワークに入っている、数学を勉強中に画面から外を厳しく見つめているリボン髪の少女の絵は、画家にフレデリック・ケイリー・ロビンソンARA(1862年8月18日~1927年1月4日)による絵画「レッスン・タイム」(1921年)から取られています。「レッスン・タイム」は現在、個人コレクションの一部となっているようです。

この絵は、「π~円周率」の曲のテーマを想起させるのと同時に、窓枠や外の木の景色が、私たちを取り囲む自然や家庭生活のテーマを反映していて、アルバムの歌やアートワークを通して連想されるイメージを表しています。彼によるもう一つの絵「青い鳥の夢」は、「コーラル・ルーム」の夢のようなイメージを念頭に置いています。作品についての詳細はこちらでお読みください。

Wikipediaから:「ケイリー・ロビンソンは、本のイラストや劇場のセットデザインなど、絵画や応用アートを制作したイギリスのアーティストです。ラファエル前派やヴィクトリア朝の題材は、20世紀に入るとかなり時代遅れになりましたが、それでも彼は描き続けました。

エアリアル – 今日の鳥

モリバトは、「エアリアル」のブックレットのアートワークや、「スカイ・オブ・ハニー」でもフィーチャーされていて、特にオープニング曲の「プレリュード」では幼いバーティが「souds like they’re saying words?」とつぶやいています。そして、ケイトは鳩の声真似で歌うのが「Don't Grow Old, Bertie」と歌っているようにも聞こえます。

モリバトはイギリスとアイルランドで最も大きなハトで、尾は体長に比例して長く頭は小さく、胸が張っています。飛んでいるときには、前の翼を横切る大きな白い帯で容易に識別できます。首の側面には白と緑の模様があります。繁殖期には、上空に向けて舞い上がり最後に翼をバタバタさせる展示飛行がよく見られます。
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