2019年1月7日月曜日

さらに続くケイト・ブッシュ リマスターと透明人間になる方法へのレビュー

Kate Bush Remastered CD Box 1 雑誌クラシックポップの2019年1月号(販売中)では、ケイト・ブッシュリマスターCDボックスセットパート1を 2018年のリイシューの3位に入れました。$nbsp; 「年末近くになってから、ケイト・ブッシュの過去作品のすべてをパッケージした ものすごいスケールのリイシューが出てきました。 ここで紹介するのは1978年の天使と小悪魔から1993年のレッドシューズまでの アルバムを集めたセットで、もっとも夢を描くアーティストによる15年にわたる貪欲で 幻想的なフォークポップです。 まさにドリーミングです。」  

一方、ビルボード・マガジンでは、ケイトのリマスターボックスセットを 2018年のベストリイシューのトップ10に選んでいます。 ロン・ハートのコメントより:  「ポップスの世界では、ケイト・ブッシュの旧作のリマスタリングというのは、 システィーナ礼拝堂の天井画の修復のようなものです — 完璧なものをどうやってそれ以上にするんでしょう? この2つのすごいボックスセットには、英国の幻想家のいままでの作品が、かつてないほど美しいパッケージ、 かつ良い音で収められています。 さらに追加の4枚組には、いままでにファンに好まれながらも手に入りにくかった 作品が含まれています。 たとえばレッド・シューズの時代の12インチリミックス、1979年のオンステージEPの中の曲、 さらにレアなのはいままで未発表だった1975年のハミングという作品や、 1994年にアイリッシュミュージシャンのデヴィー・スピレーンと録音したものの オフィシャルのリリースは2005年のエアリアルのシングル『キング・オブ・ザ・マウンテン』の B面であったマーヴィン・ゲイのセクシャル・ヒーリングのカバーなどが含まれています。」

Kate Bush Remastered Part 2

オーストラリアのサイトユア・ミュージック・レーダーでは リマスターに関してのブライアン・パーカーの素晴らしい記事をこちらに載せています。記事より: 「ケイトはこれまでに素晴らしい感動的なアルバムを作り続けてきましたが、 旧作すべてを自身のレーベルであるフィッシュピープルからリマスターで発売しました。 過去を振り返ることをあまりしてこなかった彼女にとって、全アルバムをリマスターするという作業は なかなか進んでいませんでした。 完璧な音をもっと完璧にする作業の結果はどうだったでしょうか? それは夢のような音でした。 単にトラックのボリュームを上げるのではなくて、ケイトは(ジェームズ・ガスリーとともに) 音の明晰さにこだわり、アルバムをさらに新鮮な音にしました。 しっかりとしたドラムス、クリアなバックコーラス、はっきりしたシンセのモチーフなど。 過去のアルバムに新しい息吹が吹き込まれたようで、 音がさらに鮮やかに、彩りを持ち、彼女のイマジネーションから生まれた作品たちに 新たな生命を与えています。

パッケージはCDもアナログ盤も贅沢な仕上がりです。 アルバムを個別に買うこともできますし、アナログ盤4セット、CD2セットのボックスもあります。 B面曲や12インチリミックスなどのレア曲(少年の瞳と同じころの接所で録音され、 まったくどのようなフォーマットでも未リリースだった『ハミング』など)も入っています。 どんな理由からか、オンステージのEP(最初の1979年のツアーのライブ盤)とか ビックスカイのB面の名曲『ノット・ディス・タイム』は含まれていないのですが、 これはまあ良いことにしましょう。 このリマスターされたアルバムを通じて改めて思い知るのは、 彼女がいかに特別で並外れた才能の持ち主かということです。 妥協を知らないアーティストによる聖典、美の神に忠実であり、 自らのプライバシーを守りながら音楽産業にも同時に貢献しているという ことのすばらしさ。これがケイトです。」

Stuart Maconie UKの著名な音楽ジャーナリストでありBBC6ミュージックのパーソナリティでもある スチュアート・マコニーは、 長年にわたってケイトのレビューを出してきましたが、 UKのフリーペーパーのウェイトローズ・ウィークエンドに最近書いたコラムでも 惜しげない賞賛を送っています:          

「クリエーターとして、ケイト・ブッシュは大ピラミッドを建造した人と同じように、 尊敬の対象であり後世に名を遺す記念碑的な存在だ。 ケイトは急がない。アルバムを出す周期はサッカーのワールドカップとハレー彗星が見れる周期の間ぐらい。 だから自分の人生をそれに重ねてみることもできる。私にとっては、そう。 初めて彼女を見たのは、私が音楽ぐるいのティーンエージャーだったころで、 嵐が丘と天使と小悪魔でたちまち骨抜きにされてしまいました。 愛のかたちのころにはエセックスとウィガンで施し物で生き延びてる始末。 レッドシューズの時期には北ロンドンのスタジオで彼女と会う幸運に恵まれ、 音楽雑誌について喋ったことで運命が変わったような気分に。 TSエリオットのプルーフロックはコーヒースプーンで人生を測ったが、私はケイト・ブッシュの アルバムでそうしたことになる。

あなたが同じようにケイトとの人生を送っていて、アナログ盤やCDがちょっとすり減っている 感じだったりしたら、ちょうどクリスマスシーズンに向けて発売された待ち望まれていた ボックスセット、ケイト・ブッシュ リマスターが欲しくてたまらないだろう。 古臭い批評によれば、とてもユニークで魅力的な初期のアルバム、たとえば嵐が丘は、 その後長い時間をおいて最先端のスタジオで制作されたエアリアルやセンシャル・ワールドのような 熟成されたアルバムに向けてのまだ未熟な助走期間だったということだ。 しかし私にとって楽しめてちょっと変わっているけど純粋でダイレクトに伝わってくるのは 初期の作品なのです。 ポップソングでありながら彼女の人並外れた感覚をもって漉し取られ、仕上げられている。 嘆きの天使、ディーリアス(夏の歌)、ライオン・ハートといった曲は 当時のほかの誰の作品とも違うものでした(その後無数の真似が出てきたけど)。 ローリング・ザ・ボールやハンマー・ホラーといった曲は、 とっても楽しい感じだったり、天使と小悪魔やワオは不気味な雰囲気だし、 暖かい部屋でとかフィール・イットのようにめちゃくちゃセクシーな曲もある。 ケイトのどの時期が好きだとしても、すべてがここに集まっている。 安くはない。しかしこれはUKのポップス界で孤高の輝きを持つアーティストの作品集である。 自身も歌っているように、ワオ! アンビリーバブル!」

ガーディアンでは ケイトの新しい詩集透明人間になる方法レビューを載せています。 ローラ・スネイプスが、ケイトを歌詞を通じて、しかも引用抜きで解き明かそうという記事です:

「この(ジェンダーと力についての)理解は、透明人間になる方法を貫く一つの筋で、 彼女の作品群を10つのセクションに明確な分け方を示さずに分類されています (エアリアルのスカイ・オブ・ハニーの組曲と愛のかたちのB面のナインス・ウェイブだけは そのままのかたちで入っています)。 ここには新しい視点が生まれます。スノーフレークと愛のかたちは、愛に流されてしまいそうな 時というくくりで結びつけられ、 親に不信をいだく子供を描いたクラウドバスティングから 自分を変えてしまった息子に捧げたバーティ―で、錬金術と変革について語っています。

彼女の叙述は静かです。エアリアルのコーラル・ルームでは亡き母のことを『小さな茶色のマグ』で 回想し、センシャル・ワールドのザ・フォッグでは愛の対象が透明なら どうやって愛せばいいのかと問いかけます。 ハウディ二と狂気の家では楽しみに対してオープンでありながら裏切りを避けるには どうしたら良いかという問いかけがなされています。 ジェンダーについてのセクションが2つあります。ジョアニは彼女の持つジャンヌダルクのイメージで、 男性的な戦争好きを告発する曲 (夢みる兵士)と対比されています。 後半ではブッシュは男性と女性の視点の違いを探り、欲望(リーチング・アウト)や 義務(夜舞うつばめ)を題材にしますが、ありきたりの結論にはけっして行きません。

透明人間になる方法から引き出せることが一つあるとすれば、 それはブッシュを理解することが難しいということではなく、 人生は分かりずらいものであるということかもしれません。 愛について、私たちが失ったものについてどれだけのことが分かっているでしょう? 彼女は分からないといって怖気づいてはいません。 それをしのいでゆくには好奇心をもって臨むしかないと彼女の曲は告げているようです。 ちゃんとした文学とばかばかしいようなことを大胆に並べ、 精神的な内省とあらわな現世の欲とをバランスさせ、日常の真実とファンタジーを結び合わせ、 矛盾を恐れることがありません。 最後のセクションには欲望があふれています。 バルトロッツィ夫人での官能的な洗濯物の夢物語や風の吹きすさぶ嵐が丘など。 このような探求を続けてきたことが今のブッシュをかたち作ったのでしょう。 大事なのは彼女から何を学べるかではなく、彼女についてゆくことで何を学びうるかなのです。」

ニュー・ステイツマンでのレビュー 「歌詞が文学になるとき」では、ニール・テナント(ペットショップボーイズ)、 フローレンス・ウェルチ、レナード・コーエンと並べて、4つの音楽家による詩集を題材に 書いています。 筆者のジュード・ロジャースはケイトの透明人間になる方法に格別の賞賛を与えています。

How To Be Invisible 「彼女の本はテナントのものとは異なり、とても魅力的に仕上がっています。 これはおそらく彼女の歌詞が不思議な後世になっていることが多いからでしょう。 彼女は前書きでこう書いています: 『歌詞はすべて曲とは切りなして詩として見直しましたので、 ところどころアルバムにつけた歌詞よりも詳しくなっています。』 ちょっと調べてみましたら、"o'er"というような詩的な表現ぐらいしか 見当たりませんでした。 ちゃんと確認しようと思ったら、何週間もかけてアルバムを聴いて、曲を深く理解しなければ ならないでしょう。 ブッシュはちゃんとすべて分かってやっているようです。

透明人間になる方法では、ブッシュ自身が曲のグループ分けをしていますが、 その分け方は示していません。 そのグループをつなげる金の糸は読者が見出さないといけません。 たとえば雲についての曲(クラウドバスティング、ビッグ・スカイ、ユー・ウォント・アルケミー) があって、雲をめぐる不思議な驚きを歌っています。 また、明に暗に戦争のことを歌っている曲(ピンを引き抜け、呼吸、 エクスペリメントIV)もあります。 夢みる兵士も入っていますが、本の中で読み直すと改めてはっとさせられる曲の一つです。 1980年にチャートの16位に入りましたが、亡くなった戦士についての歌詞を読むと シルヴィア・プラスの荒々しい詩を思い出します。 その中でも圧倒的なのはたとえば“Now he’s sitting in his hole,He might as well have buttons and bows.” というような部分です。

神秘的な関係性についてのテーマも繰り返されます。 サット・イン・ユア・ラップで恋人同士をつなげるロープは、 亡霊のように『ウィーラー街で雪に閉じ込められて』に現れます (それぞれ1981年と2005年の曲ですが、本には発表時期は記されていません)。 愛のかたち(1985年)とエアリアル(2005年)の後半の組曲、ナインス・ウェイブと スカイ・オブ・ハニーにも、普通の文字の連なりだけではない表現が 登場します。 ナインス・ウェイブでの溺れる女性のつぶやきは見開きのページにいろいろなフォントを 使ってリズミカルに表現されていますし、 スカイ・オブ・ハニーの鳥の歌は踊るような手書き文字で書かれています。 ケイトがこれまでにして来たように、表現の幅をどんどん広げています。」

3 件のコメント:

sozo さんのコメント...

これは長かった! 本家は引用するだけだから楽だけど。

YOU さんのコメント...

おつかれさまでした。

いつもありがとうございます。

sozo さんのコメント...

ありがとうございます!