
エアリアルのアルバム20周年を記念して、今週は11月7日(発売記念日)まで毎日1つずつタイムカプセルを作ります。これは、ケイトのすばらしい8枚目のスタジオアルバムに関連するイベント、人、物品などを、その日ごとに集めたものです。多くの人にとって、まだ「新しい」アルバムだと感じられるはずで、とても20年経ったとは思えませんが、このアルバムからはまだまだ美しい贈り物が現れて続けています…

エアリアル –今日のできごと

ケイトは「エアリアル」のためにプレスやラジオのインタビューをほとんど受けず、アルバムのプロモーションのためのインタビューの録画を行わなかったのも初めてです。そのため、MOJO誌のベテラン音楽記者であるトム・ドイルは、特別版の表紙と長編のインタビューをこの雑誌に出すことをケイトが選んだため、かなりのスクープを得たことになりました。表紙には、このアルバムの宣伝用写真を撮影したトレバー・レイトンによる、ケイトの新しいモノクロポートレートが2枚掲載されています。
2022年、この出会いを中心的な題材にした本「神秘の丘:ケイト・ブッシュの50の様相」で、ドイルはインタビューの経緯を説明しています。
「インタビューの事前には、アビー・ロード・スタジオで会う計画になっていました。前日、ブッシュは突然考えを変えて、自分の家に場所を移すことにしました。しかし、住所を教えてくれなかったので、謎めいた雰囲気です。車は朝10時半前に到着し、ロンドン北部の私の家に私を迎えに来ました。2005年9月22日木曜日、私はどこか分からない目的地に向かっていました。私が知っていたのは、ケイト・ブッシュの家に向かう車にのっているということだけでした。ケイト・ブッシュは、過去12年間、世間からほとんど姿を消していました。
しかし、彼女はついに沈黙を破ることに同意し、MOJO誌で長編のカバーストーリーを独占的に掲載することになり、私はそのインタビューを依頼されたのです。ワクワクするのと同時に不安を感じる提案でした。この時点に至るまでの何週間かの日々で、期待が高まっていました。ロンドン西部にあった当時のブッシュのマネージャーの自宅兼オフィスで、十数年ぶりのアルバムを聴かせてもらっていました。まぶしいほどの2枚組の「エアリアル」を3回聴いていました」

インタビューの抜粋が10月下旬にガーディアン紙に掲載されています(こちら)。「この12年間、このような普通の生活を送ることができて、本当にありがたいと感じています」と説明してくれました。「それは私という存在の一部なのです。洗濯をしたり、掃除をしたりすることは、私にとってとても大事なことです。業界の友人たちは食器洗い機がどのように働くか知りません。私にとっては、恐ろしいことです。人間として機能できる立場にいたいのです。有名人の世界のばかばかしいことに夢中になっているなら、なおさらです。誰かがテレビの広告に出ていたからといって、どうということはありません。誰も気にしてません」

ドイルは次のように書いています:「ケイト・ブッシュが待望のアルバムを完成させるかどうか、外の世界ではやきもきしていましたが、それは作者も同じ気持ちだったようです。「そうなんです」と彼女はため息をつく。「何度も、アルバムを絶対今年中には完成させようと考えました。本当に今年中にはリリースと、そのたびに思っていました。それから2~3年の間は、もう無理かもしれないと思っていました。アルバムをもっと早く作れたら、もっといい感じになってたかもしれないと思います。何もかも時間がかかってしまいます。どうしてか分かりませんが。時間が蒸発していくようです」。
ケイトが自分の音楽や人生における大きな変化について話してくれたのを聞けたのは素晴らしかったし、当然ながらプロセス全体を通して彼女の最優先事項だった息子のバーティを育てる合間に、どのように録音を進めることができたかも聞くことができました。MOJOもまた、このアルバムに熱狂していました。同じ号でのジム・アービンによるレビューでは、5つ星の「MOJOインスタント・クラシック」を与えられています。「ケイト・ブッシュは歌の世界におけるイギリスで最も偉大なアーティストであり、これは彼女の傑作です」このレビューにはフィオナ・ワイリーによる全面イラストが添えられていました。

トム・ドイルは2006年にQマガジンの20周年記念号のために再びケイトにインタビューしています(ケイトはこの号の20種類の選択可能な表紙の1つとしても登場します)。インタビューの中でケイトは過去20年間について回想しています。一番良かったことは、と聞かれて、「バーティという息子ができたことしかないですね」。一番残念なことは、もちろん母ハンナの死であり、ケイトはそれを「世界の終わりのようなもの」と表現しています。ケイトは20年前、レコード会社がベスト・ヒット盤に固執していたことが「くだらない考えだと思ってましたが、結局それが最も売れたレコードになったのでした(「ケイト・ブッシュ・ストーリー」)」と冗談めかして言っています。ケイトは、紅茶を飲みすぎたこと、「エアリアル」がリリースされた後に「本当に疲れ果てた」こと、そして次のアルバムを12年もかけずに出したいということなどを打ち明けています。たしかに、たったの5年しかかかりませんでした。

トム・ドイルの著書、「神秘の丘:ケイト・ブッシュの50の様相」には、ケイトが自分の家で話をした日の未発表資料がたくさん書かれていて、彼女のキャリアの中の瞬間を興味深い形で記しています。とてもお薦めで、こちらで注文できます。
エアリアル –今日の人

アルバム間の長いギャップの間にケイト・ブッシュ・ニュースのサイトを運営している者として私は、ケイトが新しい素材に取り組んでいるということを確認できるような、あらゆる細かい情報を探しながら生活していました。2000年11月30日に行われたインタビューで重要なことが明らかになりました。アメリカのグラミー賞を受賞したジャズドラマー、ピーター・アースキンが、ケイトの次のアルバムのための仕事について語ったのです。
インタビュアー:「ケイト・ブッシュですか?それについてもっと教えてください。新しいアルバムのことは知りません」。ピーター・アースキン:「久しぶりですよね。リリースまでにもう一年ほどはかかると思います。歌詞も曲も素晴らしいし、歌美しい声で、素敵な女性です。言わせてもらえば、ドラムのトラックもクールですよ」と語り、アースキンは、このアルバムでコンガ演奏デビューを果たすとコメントしています。ピーターは建築家の夢、ノクターン、プロローグの終わりのセクションでドラムを演奏しています。

ピーターは後にグレアム・トムソンにエアリアルのセッションについて話しています。グレアムはピーターとの会話の抜粋をブログに投稿しました(こちら)。「ドラムがどこに届けられるかについては、あらゆるところに秘密主義がありました。そこには守るべきプロトコルがそんざいしていました」と語っています。「ケースには特定の方法でラベルを付けて、それを扱う人々がどこに運ばれるか、どのようなプロジェクトのためかを明らかにしないようにする必要がありました。車の送迎サービスがあって、私を(ホテルで)ピックアップして、特定の場所で私を降ろして、それからセキュリティゲートを通り抜けるのですが、なにも不釣り合いなものありませんでした。すべてが非常にバランスが取れていて、信じられないほどに普通な感覚がありました。セキュリティの仕組みは、ある程度の通常性を維持するためでした」。
アースキンは3日間そこに滞在し、彼の認識では7曲から8曲で演奏したようですが、収録されたのは「建築家の夢」、「プロローグ」、「ノクターン」の3曲のみでした。のんびりしたプロセスでしたか? 「ただ違うペースで仕事をしているだけです」。ブッシュの最近のアルバムよりもはるかに有機的なプロセスで、試してみることが奨励されていました。アースキンは、最初はベーシストのジョン・ギブリンとブッシュと一緒に、アドホックなジャズトリオのような形で共演したということも回想しています。「ケイトはピアノを弾いていました。いま作っている新しい曲です」

後に、彼は以前に録音したバックトラックに追加で演奏シています。「キング・オブ・ザ・マウンテン」で「奇抜なアイデアを思いつきました。ウェザー・レポートの曲「ヌビアン・サンダンス」のように、ダブルテンポで、フリーシンコペーションのアグレッシブなドラムビートをつけました。それほど簡単に演奏できるものではなく、ハーフタイムのリンゴ風ビートをカウンターポイントとして追加しました。デルがミックスしたとき私が、[アメリカのドラマーでプレスリーのTCBバンドのメンバーである]ロン・タットがエルビスとしているみたいなサウンドだと言うと、ケイトが驚いたような表情をしていました。そう、まさにこの曲の主人公がエルビスだったのです!」。アースキンは歌詞をこの時点では知らず、ブッシュがエルビス風に歌っていたことも知りませんでした。「全然知りませんでした」と彼は笑います。「彼女の曲がこっそり教えてくれたんでしょう。私が入れたドラムが完全に狂っていることには確かに気づかれていましたが、あのアイデアを取り入れてもらえて良かったです」

「ケイトはいつも紅茶を薦めていました」とピーター・アースキンは言います。「セッションで繰り返されたジョークに、デルやジョンが映画の中のイギリス人俳優の声のように『ああ、君は素晴らしい女性だ、ケイト』と言うのがありました。それが決まり文句になっていました」。「バーティ」の曲で演奏したスザンナ・ペルは、「スタジオに到着してすぐにスタジオに行くと、数分以内にあの方がやってきて『お茶でもいかがですか』と言うのです。ケイトらしいですよね。ふらっと出ていって、紅茶をいれてくれました。信じられないほど親切でした。とても控えめで、自分が何を望んでいるかを知っていて明確なビジョンを持っているのですが、それを最高にていねいに差し出します。すべてが終わったとき、私達に感謝の手紙を添付した小切手を送ってくれました。とても楽しい経験でした」
グレアム・トムソンによるケイトの優れた伝記、アンダー・ザ・アイビーはこちらで注文できます。ピーター・アースキンについての詳細は本人の公式サイトでお読みください。
エアリアル –今日の作品
(katebushcollectables.comのご協力でお届けします)
ケイトの初めてのオンライングッズストアには、Tシャツ、スウェットシャツ、リトグラフ、マウスマットなどのアイテムがありましたが、おそらく最も魅力的だったのは、シングルとアルバムのリリースに入っているアートワークをフィーチャーした2006年のエアリアルデスクカレンダーだったはずです。
1月にはキング・オブ・ザ・マウンテンのビデオから取ったエルビスの空飛ぶ衣装の静止画像がフィーチャーされており、12月にはバーティによるキング・オブ・ザ・マウンテンのための別デザインが掲載されていました。素敵です。

エアリアル – 今日のトリビア
2015年5月、ケイトはエアリアルの「シー・オブ・ハニー」収録の曲「π~円周率」が、長寿のテレビアニメシリーズ「シンプソンズ」のエピソード「マスリート・フィート」で使用されることに同意しました。このエピソードでは、スプリングフィールド小学校とウェイバリーヒルズ小学校の数学チームが、あるイベントで競い合います。
エアリアル – 今日の鳥

ゴールドクレストはアイルランドとイギリスで育つ最も小さい繁殖鳥類の一つであり、体長はわずか9cmです。非常に活発で、枝の間を迅速に移動するので、しっかりと見るのは難しいかもしれません。成体の雄のゴールドクレストには明るい黄色の王冠のような縞があり、少しオレンジがかっています。両側に太い黒の縞があり、頭部の残りは灰色がかった緑色です。背中、胴体、尾は濃いオリーブグリーンで、翼には小さな白いバーがあります。腹は淡いグレーグリーンです。成体の雌のゴールドクレストは雄と同様ですが、王冠部分にはオレンジが決して現れません(純粋な黄色)。幼体には成体のような華やかな頭部の着色がなく、単純なグレイです。
コロナ禍の2021年12月、ケイトは自身のサイトにクリスマスメッセージの一部として以下を投稿しました。「数週間前に散歩中に起こったことについて話したいと思います。景色を見るために立ち止まったとき、すぐ隣の木で何かが動いているのに気づきました。それはゴールドクレストで、ヨーロッパ最小の鳥で、ミソサザイよりも小さいのです。怖がらせて飛んでいかないように、じっとしていました。美しい色彩で翼には孔雀の目の模様があり、小さな頭には印象的な黄色い縞があります。このゴージャスな小さな毛羽のボールは、10分かそこらで飛んでいってしまいました。それまでに見かけたのは一度だけで、とても短い間でした。とても幸せな気分になりました。この不思議な時代に、皆さんにも少し立ち止まって、周りの自然を感じてみてほしいと思います」
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